令和8年(2026年)3月18日、国土交通省より最新の「令和8年地価公示」が発表されました。公表されたデータに基づき、全国的な潮流から山梨県内全体の動向、および具体的なエリア・主要地点の価格や変動率について、事実関係を整理・解説します。
1. 全国の概況:上昇基調の継続
全国平均では、全用途平均・住宅地・商業地・工業地のいずれも5年連続(令和8年で6年連続の上昇基調)で上昇を記録しています。
- 住宅地(全国平均): +2.1%
- 商業地(全国平均): +4.3%
- 工業地(全国平均): +4.9%
- 全用途(全国平均): +2.7%
東京・大阪・名古屋の三大都市圏をはじめ、地方都市においても上昇傾向が見られます。訪日外国人観光客の回復による店舗・ホテル需要や、マンション開発、物流ネットワーク再編に伴う工業地への需要などが、全国的な地価を押し上げる要因となっています。
2. 山梨県内の全体動向:用途による動向の差と商業地のプラス転換
山梨県内の地価推移において、今回は用途ごとに異なる傾向が示されました。特に商業地において長期の下落基調からの転換が見られます。
【用途別の平均変動率と価格データ】
県内の用途別平均変動率および平均価格は以下の通りです(▲はマイナスを示します)。
- 住宅地(105地点):▲0.3% 平均価格は34,500円/㎡。前年の▲0.4%から下落率は縮小しているものの、平成5年以降34年連続の下落となっています。内訳は上昇が25地点、横ばいが28地点、下落が50地点です。
- 商業地(55地点):+0.2% 平均価格は59,000円/㎡。前年の0.0%(横ばい)から上昇に転じ、平成5年以来34年ぶりのプラスとなりました。内訳は上昇が25地点、横ばいが11地点、下落が18地点です。
- 工業地(4地点):+1.7% 平均価格は25,800円/㎡。令和4年から5年連続の上昇を維持しています。内訳は4地点すべてが上昇であり、横ばい・下落地点はありません。
- 全用途(164地点):▲0.1% 平均価格の平均変動率は前年の▲0.2%から下落率が縮小しており、県内全域で回復傾向が見られます。
3. エリア別・用途別の具体的なポイントと最高・最大地点
山梨県内の地価動向は、観光需要がみられるリゾートエリアと、利便性から実需がみられる甲府盆地周辺のエリアが牽引しています。
■ 住宅地:昭和町の利便性と富士山麓エリアの動向
住宅地全体の平均はわずかにマイナスですが、インフラや利便性に優れた一部のエリアでは上昇を記録しています。
【住宅地の変動率上位3地点】
- 山梨昭和-3(中巨摩郡昭和町河西字大林):57,500円/㎡(上昇率 +2.3%)
- 中央自動車道の甲府昭和ICに近く、大型商業施設や生活利便施設が集積する昭和町が県内トップの上昇率を記録。
- 忍野-2(南都留郡忍野村忍草字土手下):29,700円/㎡(上昇率 +2.1%)
- 富士河口湖-1(南都留郡富士河口湖町船津字松場):39,600円/㎡(上昇率 +1.8%)
- 富士山麓エリアの忍野村や富士河口湖町では、移住・別荘需要のほか、周辺の観光経済の動向が地価に影響しています。
■ 商業地:富士河口湖町の観光需要と甲府中心街
商業地全体がプラス転換する中、特定の観光地や中心市街地で上昇が観測されています。
【商業地の変動率上位3地点】
- 富士河口湖5-2(南都留郡富士河口湖町船津字上土足戸):64,900円/㎡(上昇率 +4.0%)
- 富士五湖エリアの中心地であり、観光客向けのホテル・物販・飲食需要が地価に反映され、県内1位の上昇率となっています。
- 富士吉田5-1(富士吉田市新西原2丁目):69,500円/㎡(上昇率 +3.0%)
- 甲府5-5(甲府市丸の内1丁目):304,000円/㎡(上昇率 +1.7%)
- 変動率3位の「甲府5-5」は、県都である甲府市の中心部であり、山梨県内の商業地における最高価格地点を維持しています。
■ 工業地:製造・物流拠点需要の持続
工業地は、県内すべての調査地点(4地点)で上昇を記録しています。
【工業地の全4地点の動向】
- 甲府9-1(甲府市大津町字流):22,600円/㎡(上昇率 +3.7%)
- 新駅周辺の整備計画や、広域交通網へのアクセス期待から最も高い伸びを示しました。
- 山梨昭和9-1(中巨摩郡昭和町築地新田):16,700円/㎡(上昇率 +1.8%)
- 都留9-1(都留市小形山字沖大原):18,800円/㎡(上昇率 +1.1%)
- 甲府9-2(甲府市徳行2丁目):44,900円/㎡(上昇率 +0.2%)
- 国道20号線近くの利便性から、工業地の中での最高価格地点となっています。
中部横断自動車道の開通や、中央自動車道を通じた首都圏・東海方面へのアクセス性を背景に、物流・製造拠点としての需要が地価を支えています。
4. 公示地価と実勢価格の乖離について
地価公示で一部の用途やエリアに回復・転換の傾向が示される一方、実際の取引現場(実勢価格)においては、異なる動きが見られます。
特に富士河口湖町周辺の商業地や、昭和町エリアなど、需要が特定の場所に集中するエリアにおいては、実際の取引価格(実勢価格)が公示地価や路線価を上回る価格で合意形成がなされるケースがあります。公的指標の数値と実際の市場における需要の間には、エリアによって一定の乖離が生じることがあります。
また、県内全体で回復傾向が見られるものの、住宅地で50地点、商業地で18地点の「下落地点」が依然として残されており、都市部や観光地と、それ以外の郊外・中山間地域との間で資産価値の差(二極化)が継続しています。
まとめ
令和8年の地価公示は、山梨県の不動産市場において、商業地が34年ぶりにプラスへ転じ、工業地も上昇を維持していることを示しています。ただし、エリアによる動向の差(二極化)は続いており、不動産の価値を把握するにあたっては、接道条件、形状、用途地域などの個別的要因や、最新の周辺取引事例を客観的に精査することが重要となります。
あおぎり不動産鑑定